2026.07.06 Category REPORT Reading 8 min

LLMアプリの危険は何から始まるか——OWASP Top 10を見る

生成AIアプリのリスクは、従来のWebアプリの脆弱性だけでは説明しきれない。LLMは自然言語の指示で動き、外部ツールやファイル、プラグイン、社内データに接続されることがある。

OWASPは「Top 10 for Large Language Model Applications」を公開している。これはLLMアプリケーションに固有の重大リスクを整理するプロジェクトで、OWASP GenAI Security Projectの中核的な成果物になっている。

先頭はプロンプトインジェクション

OWASP Top 10 for LLM Applications v1.1 の例
項目リスク
LLM01 Prompt Injection悪意ある入力でLLMの挙動を操る
LLM02 Insecure Output Handling出力を検証せず、下流システムで実行してしまう
LLM03 Training Data Poisoning学習データの改ざんでモデル挙動が損なわれる
LLM05 Supply Chain Vulnerabilities部品、サービス、データセットの汚染でシステム全体が弱くなる
LLM08 Excessive AgencyLLMに過剰な自律権限を与える

特に重要なのは、プロンプトインジェクションと過剰な自律権限の組み合わせだ。AIエージェントにファイル読み取り、メール送信、決済、コード実行、外部API呼び出しを許すと、単なるチャットの失敗では済まない。

AIアプリは「出力」ではなく「権限」で危なくなる

LLMの回答が間違うだけなら、人間が読んで直せる。しかし、LLMの出力をそのままSQL、シェル、ブラウザ操作、業務システムのAPIに流すと、間違いが実行される。

したがってAIアプリの設計では、モデルの賢さより先に、権限の最小化、出力検証、人間承認、ログ、外部データとの分離が重要になる。AIが強くなるほど、セキュリティ設計は「プロンプトをうまく書く」から「AIに何を触らせないか」へ移る。

この記事の限界

  • OWASP Top 10はリスク分類であり、個別システムの安全性を保証するチェックリストではない
  • 実装時は、利用するモデル、ツール権限、外部連携、ログ保存、利用者権限ごとに脅威分析が必要

出典(2026年7月7日閲覧): OWASP「Top 10 for Large Language Model Applications」(owasp.org

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UMT株式会社 取締役 / フォースネット株式会社 執行役員

IT業界25年のエンジニア(コンサル・プロダクトマネージャー15年、Python 10年)。2児の父として、AIを使った家庭学習の仕組みを自作して毎日運用し、地元・横浜/鎌倉ではAI・パソコン教室も不定期に開いている。このサイトには、教育とAIについて調べたこと・考えたことと、その道具を置いている。