2026.06.11 Category REPORT Reading 7 min

「IT人材79万人不足」の中身——2030年予測を読み直す

「2030年にIT人材が79万人不足する」。教育産業の広告からニュースまで、あちこちで引用される数字だ。一次ソースに当たって、中身を確認する。

出どころは2019年の経産省委託調査

この数字の出典は、経済産業省委託「IT人材需給に関する調査」(みずほ情報総研、2019年4月公表)。2030年に最大約79万人の不足という試算で、これはIT需要の伸び率を年3〜9%、労働生産性の上昇を年0.7%と置いたシナリオの「最大値」だ。

あまり紹介されない但し書きがある。同じ報告書は、労働生産性が年5.23%上昇すれば需給ギャップはゼロになるという試算も併記している。つまり「79万人不足」は運命ではなく、「生産性がほとんど上がらなければ」という条件付きの警告だった。

生成AIは、この試算の前提の外にいる

重要なのは公表時期だ。2019年——生成AIの登場前である。生成AIがソフトウェア開発の生産性をどれだけ引き上げるかは、まさにこの試算の分かれ目だった「生産性上昇率」を直撃する変数で、79万人という数字を今後そのまま使い続けるのは危うい。不足が消えるという意味ではない。「単純な頭数の不足」から「AIを使える人材とそうでない人材の偏在」へ、問題の形が変わる可能性が高い、ということだ。

足元の待遇データ

IT人材の待遇に関する民間調査(2025年)
項目数値出典
ITエンジニア平均年収469万円doda
直近1年で年収が増えたIT人材36.3%レバテック
 うち30代45.1%レバテック
2025年度にIT採用を増やす企業約4割レバテック

この記事の限界

  • 79万人試算は2019年公表で、生成AI以後の改訂版に相当する公的試算はまだ確認できていない
  • AI人材の年収には権威ある公的統計がなく、民間調査(転職サービス系)に依存している。母集団の偏りに注意

出典(2026年7月6日閲覧): 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(概要PDF報告書PDF)/ doda「ITエンジニアの平均年収」(doda.jp)/ レバテック 各種調査(求人ボックスジャーナル経由)

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サク
UMT株式会社 取締役 / フォースネット株式会社 執行役員

IT業界25年のエンジニア(コンサル・プロダクトマネージャー15年、Python 10年)。2児の父として、AIを使った家庭学習の仕組みを自作して毎日運用し、地元・横浜/鎌倉ではAI・パソコン教室も不定期に開いている。このサイトには、教育とAIについて調べたこと・考えたことと、その道具を置いている。