児童生徒1人当たり1.1台——端末は600台減り、児童生徒は13万7783人減った
公立学校の学習者用コンピュータは、児童生徒1人当たり1.1台になっている。ただしこの比率は、分子(端末台数)と分母(児童生徒数)の両方が動いた結果である。文部科学省「令和6年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)【確定値】」(調査基準日: 令和7年3月1日)から、その内訳を確認する。
台数はほぼ横ばい、分母は1年で13万7783人減った
| 調査基準日 | 学習者用コンピュータ | 児童生徒数 | 1人当たり |
|---|---|---|---|
| H31.3(2019) | 1,781,027台 | 11,673,644人 | 0.2台 |
| R2.3(2020) | 1,911,890台 | 11,587,653人 | 0.2台 |
| R3.3(2021) | 7,648,983台 | 11,452,154人 | 0.7台 |
| R4.3(2022) | 11,378,549台 | 11,319,053人 | 1.0台 |
| R5.3(2023) | 11,763,122台 | 11,183,595人 | 1.1台 |
| R6.3(2024) | 11,847,856台 | 11,033,041人 | 1.1台 |
| R7.3(2025) | 11,847,256台 | 10,895,258人 | 1.1台 |
2020年3月1日から2022年3月1日までの2年間で、台数は191万1890台から1137万8549台へ、およそ6倍になった。この2時点に挟まれるのが令和2〜3年度であり、文部科学省は同年度に「1人1台端末」と高速通信ネットワークを集中的に整備したと説明している。
その後の3年間の動きは性質が違う。2024年3月の1184万7856台から2025年3月の1184万7256台へ、台数は600台減っている。ほぼ横ばいと言ってよく、少なくとも純増はしていない。一方で児童生徒数は同じ1年で1103万3041人から1089万5258人へ、13万7783人(1.2%)減った。
1人当たり1.1台という公表値は小数第1位に丸めたものだが、丸める前の値は2024年3月の1.074から2025年3月の1.087へわずかに上がっている。この1年に関しては、比率の上昇は、台数が減る一方で分母の減少幅がそれを上回った結果である。
学校種別: 高等学校と特別支援学校が1.2台
| 学校種 | 学校数 | 児童生徒数 | 1人当たり台数 | 普通教室の無線LAN | 大型提示装置 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小学校 | 18,271 | 5,825,949 | 1.1台 | 96.7% | 93.3% |
| 中学校 | 8,945 | 2,867,856 | 1.1台 | 96.9% | 91.5% |
| 義務教育学校 | 232 | 75,951 | 1.1台 | 99.4% | 92.0% |
| 高等学校 | 3,439 | 1,951,282 | 1.2台 | 99.4% | 93.1% |
| 中等教育学校 | 35 | 23,853 | 1.1台 | 100.0% | 97.4% |
| 特別支援学校 | 1,126 | 150,367 | 1.2台 | 97.5% | 64.2% |
| 全学校種 | 32,048 | 10,895,258 | 1.1台 | 97.1% | 91.0% |
公表されている小数第1位までの値で見ると、1人当たり台数は高等学校と特別支援学校が1.2台、それ以外は1.1台で、学校種による差は小さい。ただし公表値は丸めた値であり、これ以上細かい比較はできない。
差が残っているのは大型提示装置で、特別支援学校の64.2%が全学校種平均91.0%と離れている。この調査は整備率を教室数の比で測っているため、なぜ差があるのかは示していない。
都道府県別で見ても、1人当たり台数は最高1.2台・最低1.0台・平均1.1台で、前年度(最高1.2台・最低1.0台・平均1.1台)から変わっていない。無線LANまたは移動通信システムでインターネット接続を行う普通教室の割合は、平均99.3%・最高100.0%・最低97.5%(前年度は平均98.3%・最高100%・最低95.6%)だった。台数は最高と最低で0.2台、通信環境は2.5ポイントの差である。集中整備前の水準を思えば小さい幅だが、台数については最低の1.0台に対して最高が1.2台なので、比で見れば2割の開きが残っていることになる。
通信環境: 無線LAN整備率97.1%、回線の主流は1Gbps
| 調査基準日 | 無線LAN整備率 | 無線LAN又はLTE等 | LTE等の整備率 |
|---|---|---|---|
| H31.3(2019) | 41.0 | — | — |
| R2.3(2020) | 48.9 | — | — |
| R3.3(2021) | 78.9 | 80.3 | 2.1 |
| R4.3(2022) | 94.8 | 96.7 | 2.9 |
| R5.3(2023) | 95.7 | 97.8 | 3.2 |
| R6.3(2024) | 96.2 | 98.3 | 3.0 |
| R7.3(2025) | 97.1 | 99.3 | 7.7 |
LTE等の整備率が3.0%から7.7%へ跳ねているが、これは実態の変化とは限らない。同資料は、令和5年度調査までは移動系通信システムを「主たる接続回線として利用している教室」の総数で算出していたのに対し、令和6年度調査は調査項目の見直しに伴い「併用している場合も含めた」教室の総数を用いていると注記している。定義が変わった年の前後で比べることはできない。
学校単位の接続方式では、固定系通信単独が91.8%、固定系と移動系の併用が5.8%、移動系通信単独が2.3%、未接続が0.0%だった(学校総数32,048)。
契約種別は、ベストエフォート型が86.0%、ギャランティ型が14.0%である(単独で移動系通信を利用している学校と未接続の学校を除く31,294校が母数)。ベストエフォート型を選んだ26,925校の回線速度(理論上の下り最大値)は、1Gbpsが69.4%で最も多く、100Mbps以上〜1Gbps未満が12.6%、10Gbps以上が8.0%、2Gbpsが6.7%と続く。100Mbps未満は0.4%だった。ギャランティ型4,369校では1Gbpsが70.9%、100Mbps以上〜1Gbps未満が16.3%、2Gbpsが11.3%、100Mbps未満が0.6%で、残る約1.0%が3Gbps以上に分かれている。
この調査が記録しているのは契約上の理論値(下りの最大値)であり、授業中に実際に出ている速度ではない。なお、ギャランティ型で特定できなかった0.2%と0.1%が具体的にどの帯域なのかは、公表資料の図からは読み取れない。
教員のICT活用指導力: 授業で使わせる能力が最も低い
| 大項目 | 令和6年度 | 前年度 |
|---|---|---|
| A 教材研究・指導の準備・評価・校務などにICTを活用する能力 | 90.7% | 89.6% |
| B 授業にICTを活用して指導する能力 | 82.2% | 80.4% |
| C 児童生徒のICT活用を指導する能力 | 83.1% | 81.6% |
| D 情報活用の基盤となる知識や態度について指導する能力 | 89.2% | 88.1% |
4項目とも前年度から1〜2ポイント上がっている。水準には差があり、AとDが約9割なのに対し、BとCは8割台前半にとどまる。低い側の2つは、いずれも授業でICTを使う場面と、児童生徒のICT活用を指導する場面の能力である。
16の小項目で見ると、最も高いのはA3「授業に必要なプリントや提示資料、学級経営や校務分掌に必要な文書や資料などを作成するためにワープロソフト、表計算ソフトやプレゼンテーションソフトなどを活用する」の93.5%だった。低い側は次の4項目である。
| 項目 | 内容 | 割合 |
|---|---|---|
| C4 | 児童生徒が互いの考えを交換し共有して話合いなどができるように、コンピュータやソフトウェアなどを活用することを指導する | 76.9% |
| B4 | グループで話し合って考えをまとめたり、協働してレポート・資料・作品などを制作したりするなどの学習の際に、コンピュータやソフトウェアなどを効果的に活用させる | 78.2% |
| C3 | 児童生徒がワープロソフト・表計算ソフト・プレゼンテーションソフトなどを活用して、調べたことや自分の考えを整理したり、文章・表・グラフ・図などに分かりやすくまとめたりすることができるように指導する | 79.7% |
| B3 | 知識の定着や技能の習熟をねらいとして、学習用ソフトウェアなどを活用して、繰り返し学習する課題や児童生徒一人一人の理解・習熟の程度に応じた課題などに取り組ませる | 79.8% |
低い側に並ぶ4項目は、いずれも児童生徒が端末を使う場面の指導である。ただしこれは教員の自己評価であり、実際にできているかを外から測ったものではない。
研修: 受講率73.5%、実施主体の62.9%は学校
令和6年度中にICT活用指導力の各項目に関する研修を受講した教員の割合は、都道府県平均で73.5%だった(前年度72.1%)。都道府県別では最高95.8%・最低58.8%で、前年度の最高99.6%・最低56.8%より幅が縮んでいる。受講した教員1人当たりの平均受講回数は2.3回(前年度2.3回)、都道府県別で最高3.8回・最低1.6回だった。
| 実施主体 | 割合 |
|---|---|
| 学校 | 62.9% |
| 市区町村 | 14.8% |
| 教科等の研究会 | 7.9% |
| 都道府県 | 7.4% |
| 民間 | 3.8% |
| その他 | 1.6% |
| 国・独立行政法人 | 1.2% |
| 各種学会 | 0.5% |
受講した研修の実施主体の62.9%が学校だった。市区町村・都道府県・国を合わせても23.4%で、校内で行う研修が中心という構成である。なおこれは受講された研修の主体別の割合であり、研修の開催件数や教員数の割合ではない。
その他の整備指標
教員の校務用コンピュータ整備率は131.2%、指導者用コンピュータ整備率は136.3%である。100%を超えるのは、資料の注記によれば、教員1人1台に加えて職員室等に設置している共用の校務用コンピュータを数えている場合があるためである。統合型校務支援システムの整備率は94.8%で、2019年3月の57.5%から一貫して上がり続けている。
更新は5年をかけた計画に置かれている
集中整備された端末は、いずれ更新の時期を迎える。文部科学省が令和5年11月10日付で各都道府県教育委員会へ出した事務連絡は、令和5年度補正予算案の内容として、GIGAスクール構想の推進(1人1台端末の着実な更新)に2,661億円を計上したと記している。うち公立学校の端末整備が2,643億円、国私立・日本人学校等の端末整備が18億円である。
この資料は、1人1台端末の利活用が進むにつれて故障端末の増加やバッテリーの耐用年数が迫るなどしており、今後5年程度をかけて端末を計画的に更新すること、都道府県に5年間の基金を造成し、当面は令和7年度までの更新分(約7割)に必要な経費を計上したことを説明している。補助基準額は5.5万円/台、予備機は15%以内、公立学校の補助率は3分の2とされている。
今回の調査は台数と比率を記録するもので、更新が計画どおり進んでいるかどうかを測る調査ではない。上で見た「台数600台減」を更新の進捗と結びつけて読むことはできない。
この記事の限界
- この調査の対象は全国の公立学校(小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校)である。国立・私立学校は含まれない。「高等学校」の数字も公立高校のものである
- 令和6年能登半島地震の影響により、石川県輪島市の12校(全学校数の0.04%、小学校9校・中学校3校)は回答不可能として除かれている
- 「学習者用コンピュータ」には、いわゆる1人1台端末だけでなく、コンピュータ教室等に整備されているコンピュータも含まれる。1人当たり1.1台は、児童生徒が1人1台の端末を持っているかどうかを直接示す数字ではない
- 端末台数の基準日は令和7年3月1日だが、比率の分母となる児童生徒数は令和6年5月1日現在の値である。分子と分母で基準日が10か月ずれている
- 利用不能な状態にあるコンピュータは台数に数えられていない。台数の増減が、新規調達・更新・廃棄・故障のどれによるものかも、学校種別・自治体別にどう分布しているのかも、この資料からは分からない
- 1人当たり1.1台は総台数を児童生徒総数で割った値であり、児童生徒一人ひとりに端末が行き渡っている割合でも、同時に使える台数でも、稼働している台数でもない
- 普通教室の移動系通信システム(LTE等)の整備率は令和6年度調査で算出方法が変わっており、前年度以前との比較はできない
- 「大型提示装置」の定義も令和7年3月調査で変わっている。平成31年3月から令和6年3月まではプロジェクタ・デジタルテレビ・電子黒板を指し、令和7年3月はプロジェクタ・大型ディスプレイ・電子黒板を指す。この記事では同一年の学校種間の比較にとどめており、年度をまたぐ推移は定義変更の影響を含む
- 教員のICT活用指導力は、授業を担当している教員が4段階で行った自己評価の集計である。外部からの観察や実技の評価ではない。対象は各教科等の授業を定期的に担当している教員で、一時的・臨時的に担当する教員は含まれない
- 研修の受講割合には、調査基準日(令和7年3月1日)の時点では未受講でも、令和7年3月末日までに受講予定の教員が含まれている
- 回線速度は契約上の理論値(下りの最大値)であり、授業時に実際に出ている通信速度ではない
- 端末の更新に関する記述は令和5年度補正予算案の段階で作成された事務連絡に基づく。その後の執行状況・進捗はこの記事では確認していない
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