通信制高校の生徒が30万人を超えた——入学者の57%は中学3年で不登校だった
高等学校の全日制・定時制の生徒数が減り続ける一方で、通信制課程の生徒数は増え続けている。文部科学省が2026年3月の会議に提出した資料では、令和7年度(2025年5月1日現在)の通信制課程の生徒数が30万人を超えた。あわせて、文科省が2026年4月21日に公表した「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果(速報版)」から、その30万人がどういう場所で学んでいるのかを確認する。
通信制の生徒数は10年で約1.7倍になった
以下は文科省が「学校基本調査」を出典として会議資料に掲載した推移である。全日制・定時制の数値には専攻科・別科の生徒を含み、通信制の数値には他からの併修者を含まない。
| 年度 | 全日制・定時制 | 公立通信制 | 私立通信制 | 通信制計 |
|---|---|---|---|---|
| 平成27年度 | 3,319,114 | 66,702 | 113,691 | 180,393 |
| 令和2年度 | 3,092,064 | 55,427 | 151,521 | 206,948 |
| 令和3年度 | 3,008,172 | 53,880 | 164,509 | 218,389 |
| 令和4年度 | 2,956,900 | 54,621 | 183,646 | 238,267 |
| 令和5年度 | 2,918,501 | 57,437 | 207,537 | 264,974 |
| 令和6年度 | 2,906,921 | 60,333 | 229,754 | 290,087 |
| 令和7年度 | 2,873,619 | 62,008 | 243,189 | 305,197 |
平成27年度から令和7年度までの10年間で、全日制・定時制は3,319,114人から2,873,619人へ約44万5千人減った。同じ10年間で通信制は180,393人から305,197人へ約12万5千人増えている。増加分の大半は私立で、113,691人から243,189人へと約2.1倍になった。
公立通信制は10年前より少ない。この表の範囲では令和3年度の53,880人が最も少なく、そこから令和4年度以降は4年連続で増えて、令和7年度は62,008人である。
令和7年度の全日制・定時制と通信制を単純に合計すると3,178,816人で、通信制はその9.6%にあたる。この分母には専攻科・別科の生徒が含まれ、通信制には併修者が含まれないため、生徒本人の数え方を厳密に揃えた比率ではない。
増えているのは私立の学校数
| 年度 | 全日制・定時制 | 公立通信制 | 私立通信制 | 通信制計 |
|---|---|---|---|---|
| 平成27年度 | 4,939 | 77 | 160 | 237 |
| 令和2年度 | 4,874 | 78 | 179 | 257 |
| 令和5年度 | 4,791 | 78 | 211 | 289 |
| 令和6年度 | 4,774 | 79 | 224 | 303 |
| 令和7年度 | 4,761 | 82 | 251 | 333 |
通信制課程を置く高校は10年間で237校から333校へ96校増えた。うち91校は私立の増加分である。公立は77校から82校で、文科省の資料はこれを「わずかに増加している」と記述している。
入学者の57%は中学3年で不登校だった
ここからは「令和7年度通信制高等学校実態調査(速報版)」の数値である。調査時点は令和7年5月1日、対象は通信制課程を置く323校(公立81校、私立227校、株式会社立15校)で、3以上の都道府県で生徒募集を行う広域が133校(41.2%)、狭域が190校(58.8%)である。
令和7年度の入学者77,998人のうち、中学3年生のときに不登校だった生徒は44,461人で、57.0%を占める。
| 設置者 | 入学者数 | 中3時に不登校 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 公立 | 9,969 | 5,333 | 53.5% |
| 私立 | 61,200 | 34,663 | 56.6% |
| 株式会社立 | 6,829 | 4,465 | 65.4% |
| 全体 | 77,998 | 44,461 | 57.0% |
通信制課程は戦後、勤労青年に高校教育の機会を提供するものとして制度化された。文科省の資料は、自宅等で自立して学習することが前提となっているものの、実際は勤労青年だけでなく「不登校経験を有する生徒や特別な支援を必要とする生徒など、多様な背景を有する生徒が多く在籍している状況にある」と現状を整理している。
令和5年度文部科学省委託事業「高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究 高等学校の現状に係る調査・分析に係る調査研究」報告書では、在籍生徒のうち小・中学校および前籍校で不登校経験がある生徒の割合は狭域通信制で65.6%、広域通信制で64.2%とされている。同調査ではひとり親家庭の生徒が28.2%・29.9%、心療内科等に通院歴のある生徒が21.1%・21.4%、特別な支援を必要とする生徒が7.9%・8.1%と報告されている(順に狭域・広域)。
不登校そのものの全体像は別レポートで扱っている。
1年間、面接指導に1日も来ていない生徒が8,097人
通信制課程の教育は、添削指導・面接指導(スクーリング)・試験によって行われる。実態調査は、令和7年3月31日時点の在籍生徒306,711人のうち、令和6年度の1年間に添削課題の提出はあるが面接指導に1日も来ていない生徒を8,097人(2.6%)と集計している。
| 設置者 | 在籍生徒数 | 該当生徒数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 公立 | 58,363 | 2,478 | 4.2% |
| 私立 | 220,125 | 5,060 | 2.3% |
| 株式会社立 | 28,223 | 559 | 2.0% |
| 全体 | 306,711 | 8,097 | 2.6% |
割合が最も高いのは公立の4.2%で、私立2.3%・株式会社立2.0%を上回る。
なお学習指導要領では、多様なメディアを利用した学習を計画的・継続的に取り入れた場合、面接指導等の時間数のうち10分の6以内を免除でき、生徒の実態等を考慮して特に必要がある場合は複数のメディアの利用により合わせて10分の8以内まで免除できる。実態調査では、特別活動以外の大半の教科・科目で、この減免を「10分の6以内」で行う学校が全体の70〜80%だった。
教員の主な勤務場所は、全体では本校より連携施設が多い
実態調査が集計した通信制課程の教諭等・講師及び助教諭は19,081人である。このうち辞令上その学校の通信制課程のみの勤務となっている専任は8,573人(44.9%)、他の学校・課程・施設の職を兼ねる兼任は10,508人(55.1%)だった。専任の割合は公立68.9%、私立40.1%、株式会社立45.5%である。
主な勤務場所(勤務時間のうち最も多く勤務する場所)で見ると、全体では当該校の通信制課程で勤務する者が6,490人(34.0%)で、最も多いのは連携する面接指導等実施施設の8,879人(46.5%)である。連携する学習等支援施設が1,634人(8.6%)、当該校の全日制または定時制課程が1,450人(7.6%)と続く。
ただし設置者で傾向が分かれる。公立では当該校の通信制課程で勤務する者が65.7%と最も多い。私立で最も多いのは連携する面接指導等実施施設の54.8%、株式会社立で最も多いのは連携する学習等支援施設の55.3%である。
週当たりの勤務時間(辞令等で定める正規の勤務時間、休憩・残業を除く)では、週0〜10時間未満が全体の47.4%(9,046人)を占める。公立では29.1%だが、私立では52.4%である。
スクールカウンセラーに相談できる体制を整えている学校は323校中273校(84.5%)で、公立は81校中80校(98.8%)、私立は227校中181校(79.7%)、株式会社立は15校中12校(80%)だった。
学びの場は4,341の連携協力施設に分散している
通信教育連携協力施設は全国に4,341施設ある(公立152、私立3,875、株式会社立314)。内訳は面接指導や試験を行う面接指導等実施施設が2,024、それ以外の学習等支援施設が2,317である。
この連携協力施設について、高等学校通信教育規程第13条は、実施校(本校)が施設ごとに連携協力に係る活動の状況を評価し、その結果を公表するとともに設置者へ報告することを定めている。実態調査では、対象4,138施設(令和7年度開校の本校と連携する203施設を除く)のうち、本校が自己評価を実施していない施設が2,398施設(58%)あった。実施している1,740施設のうち、結果を公表していない施設が356(20.5%)、設置者に報告していない施設が53(3%)である。
本校側も同様の状況がある。令和7年度開校の29校を除く294校のうち、自己評価を実施していない学校が41校(13.9%)。実施している253校のうち、結果を公表していない学校が64校(25.3%)、設置者に報告していない学校が15校(5.9%)だった。
情報公開についても、高等学校通信教育規程第14条第1項各号に掲げる情報を公表していない学校・施設が多く、特に教職員組織に関すること、入学・退学・転学・休学・卒業に関すること、通信教育実施計画に関することで公表割合が低い傾向にあると報告されている。
学校規模も一様ではない。在籍生徒が5,000人以上の学校が10校(私立9校、株式会社立1校)ある一方、収容定員の充足率が50%未満の学校が全体の42.4%を占める。
制度側は法改正の検討に入っている
生徒数の増加と並行して、制度側も動いている。文科省は平成27年のウィッツ青山学園高等学校の事案などを受け、所轄庁と共同で広域通信制高校への実地の立ち入り調査(点検調査)を実施しており、2026年3月1日時点で73校に対して行われている。指摘された事案には、学習指導要領で定める面接指導の回数が不足していた、相当する教員免許を有していない者が添削指導や面接指導を行っていた、提携するサポート施設をあたかも高校のように表現し生徒・保護者に誤解を与えていた、といったものが挙げられている。
2025年10月29日の三党合意(自由民主党・公明党・日本維新の会)では、高等学校等就学支援金の支給上限額について、私立全日制を現行の39.6万円から45.7万円とするとともに、私立通信制の支給上限額を33.7万円とする方針が示された。あわせて通信制高校等における管理・運営の適正化や情報公開の徹底、点検の強化に早急に取り組むこと、定時制教育及び通信教育振興法を早急に改正することが盛り込まれている。
2026年2月13日の「高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)」も、通信制高校が不登校経験など多様な背景を持つ生徒に学習機会を提供する役割を担っている面がある一方で、不適切な学校運営や教育活動が指摘されている学校も存在するとして、同法の見直しが求められるとしている。
この記事の限界
- 通信制課程の学校数・生徒数の推移は、文科省が2026年3月25日の会議資料に「学校基本調査」を出典として掲載した数値を用いた。学校基本調査の統計表そのもの(e-Stat掲載分)は本記事では参照していない。学校基本調査は速報値と確定値で数値が更新されることがある
- 全日制・定時制の生徒数には専攻科・別科の生徒が含まれ、通信制の生徒数には他からの併修者が含まれない。両者を足した数に対する通信制の比率は、この定義差を残したままの概算である
- 学校基本調査(令和7年度)の通信制333校と、実態調査の323校は一致しない。両者が異なる理由は本記事が参照した資料に説明されていない。実態調査は公立81・私立227・株式会社立15という内訳で、株式会社立を私立と分けて集計しており、本記事が参照した学校基本調査ベースの資料(公立・私立の2区分)とは区分の立て方も異なる。本記事では両者を接続せず、それぞれの出典の集計として扱っている
- 実態調査は速報版であり、確定版で数値が変わる可能性がある
- 「中学3年生のときに不登校だった生徒」の判定基準は本記事が参照した資料に記載がない
- 「面接指導に1日も来ていない生徒」は、添削課題の提出がある生徒に限った集計である。添削課題の提出もない生徒の状況は本記事では扱っていない。また令和7年度開校の29校と、該当生徒がいない126校は関連する内訳集計から除かれている
- 自己評価・情報公開の集計は実施・公表・報告の有無を数えたものであり、評価や公表内容の質を判定したものではない
- 在籍生徒の不登校経験・家庭状況の割合は令和5年度の文科省委託調査によるもので、令和7年度実態調査の数値ではない
- 就学支援金の支給上限額および法改正は、三党合意および基本方針で示された方針であり、本記事は制度としての施行状況を確認したものではない
出典(2026年7月30日閲覧): 文部科学省「通信制課程における教育課程について」(令和8年3月25日、資料2 PDF。学校数・生徒数の推移、教育課程の特例、点検調査、三党合意、グランドデザインの各抜粋)/ 文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果(速報版)について」(令和8年4月21日公表。概要PDF/本体PDF/掲載ページ「高等学校通信教育の質の確保・向上」)/ 文部科学省「令和7年度学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値について公表します」(令和7年12月26日、PDF。高等学校の学校数4,761校・在学者数2,873,619人)
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