いじめ認知件数76万9022件、過去最多——認知した学校は83.9%、残り16.1%は0件だった
いじめの認知件数が過去最多を更新した。ただしこの数字は、学校がいじめとして認知した件数であり、認知されなかった事案を含む総発生数ではない。文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」から、その内訳を確認する。
76万9022件、1,000人当たり61.3件
| 学校種 | 令和6年度 | 前年度 | 1,000人当たり |
|---|---|---|---|
| 小学校 | 610,612件 | 588,930件 | 101.9件 |
| 中学校 | 135,865件 | 122,703件 | 42.6件 |
| 高等学校 | 18,891件 | 17,611件 | 5.9件 |
| 特別支援学校 | 3,654件 | 3,324件 | 23.8件 |
| 計 | 769,022件 | 732,568件 | 61.3件 |
前年度から36,454件(5.0%)の増加である。児童生徒1,000人当たりの認知件数は61.3件(前年度57.9件)。件数の8割近くを小学校が占めており、1,000人当たりで見ても小学校101.9件に対し高等学校5.9件と、学校種によって17倍以上の開きがある。
12年の推移: 令和2年度に一度減り、その後4年連続で増加
| 年度 | 認知件数 | 1,000人当たり |
|---|---|---|
| H25(2013) | 185,803 | 13.4 |
| H26(2014) | 188,072 | 13.7 |
| H27(2015) | 225,132 | 16.5 |
| H28(2016) | 323,143 | 23.8 |
| H29(2017) | 414,378 | 30.9 |
| H30(2018) | 543,933 | 40.9 |
| R1(2019) | 612,496 | 46.5 |
| R2(2020) | 517,163 | 39.7 |
| R3(2021) | 615,351 | 47.7 |
| R4(2022) | 681,948 | 53.3 |
| R5(2023) | 732,568 | 57.9 |
| R6(2024) | 769,022 | 61.3 |
2013年度の18万5803件から2024年度の76万9022件まで、11年で約4.1倍になっている。ただし一直線ではない。2020年度(令和2年度)は前年度から約9万5000件減って51万7163件となり、そこから4年連続で増加した。
文科省は増加の背景として、いじめ防止対策推進法における定義や積極的な認知に対する理解が広がったこと、一人一台端末を活用した心の健康観察の導入、アンケートや教育相談の充実による児童生徒への見取りの精緻化、SNS等のネット上のいじめの積極的な認知が進んだことを挙げている(同資料は、増減の要因は都道府県・市町村教育委員会へのアンケートや聞き取り等を踏まえたものだと注記している)。挙げられているのはいずれも認知の側の変化であり、実際の発生が増えたかどうかについては述べていない。認知の広がりが件数に含まれる以上、この数字だけで発生頻度の増減を判定することはできない。
学年別: 最も多いのは小学2年生
| 学年 | 認知件数 | 学年 | 認知件数 |
|---|---|---|---|
| 小1 | 111,139 | 中1 | 70,062 |
| 小2 | 117,867 | 中2 | 44,108 |
| 小3 | 116,012 | 中3 | 22,455 |
| 小4 | 105,291 | 高1 | 10,074 |
| 小5 | 91,498 | 高2 | 6,931 |
| 小6 | 69,599 | 高3 | 3,934 |
最多は小学2年生の11万7867件で、小学3年生(11万6012件)、小学1年生(11万1139件)が続く。小学2年生をピークに、おおむね学年が上がるにつれて減り、高校3年生では3,934件と小学2年生の30分の1になる。中学1年生(7万62件)が小学6年生(6万9599件)をわずかに上回り、進学時に一度増えている点も確認できる。なお資料に「高4」として掲載されている学年は52件だった。学年別の件数には特別支援学校の小学部・中学部・高等部が含まれる。
年齢が上がるほど加害・被害が減るとは限らない。学校が把握できる形の行為が減るのか、本人が申告しなくなるのか、教員の目が届く時間が減るのか——この統計だけでは区別できない。上の学年ほど数が小さいという事実だけが確認できる。
認知した学校は83.9%、残りは0件で報告している
| 学校種 | 認知した学校数 | 割合 | 1校当たり件数 |
|---|---|---|---|
| 小学校 | 17,347/19,060校 | 91.0% | 32.0件 |
| 中学校 | 8,816/10,179校 | 86.6% | 13.3件 |
| 高等学校 | 3,499/5,575校 | 62.8% | 3.4件 |
| 特別支援学校 | 542/1,189校 | 45.6% | 3.1件 |
| 全学校 | 30,204/36,003校 | 83.9% | 21.4件 |
いじめを1件でも認知した学校は全体の83.9%で、資料では前年度より+0.3%とされている。逆に言えば、16.1%にあたる5,799校は認知件数0件として報告している。学校種別では高等学校62.8%、特別支援学校45.6%と、小・中学校(91.0%・86.6%)との差が大きい。
文科省はこの資料の中で、2015年12月の児童生徒課長通知を引用している。いじめを認知していない学校には真に根絶できている場合もあるだろうが、放置されたいじめが多数潜在する場合もあると懸念しており、認知件数が0件だった学校は事実を児童生徒や保護者に公表して検証を仰ぎ、認知漏れがないか確認すること——という内容である。文科省は0件という報告に対して、認知漏れがないかを確認するよう求めている。
態様: 悪口が最多、ネットいじめは2万7365件
態様別の構成比(複数回答)では、小・中学校と特別支援学校で「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」が最も多く(小学校57.5%、中学校63.3%、特別支援学校43.4%)、次いで「軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする」(小学校24.5%、中学校14.8%、特別支援学校22.3%)が続く。高等学校は「冷やかしやからかい」62.0%が最多で、2番目が「仲間はずれ、集団による無視をされる」15.5%と順序が変わる。
「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」は全体で2万7365件だった。2013年度の8,788件から11年でおよそ3.1倍で、前年度(2万4678件)からも増えている。構成比は学校種で差が大きく、小学校1.9%に対し高等学校13.9%、中学校9.3%だった。
重大事態1,404件、うち34.9%は事前にいじめとして認知されていなかった
いじめ防止対策推進法第28条第1項に規定する重大事態の発生件数は1,404件で、前年度の1,306件から98件(7.5%)増えて過去最多となった。ただし増加率は前年度の42.1%から7.5%へ大きく低下している。内訳は第1号(生命・心身・財産に重大な被害が生じた疑い)が768件(前年度648件)、第2号(相当の期間の欠席を余儀なくされている疑い)が896件(前年度864件)。1件が両号に該当する場合は双方に計上されるため、合計は発生件数と一致しない。
学校種別の発生件数は小学校586件、中学校543件、高等学校262件、特別支援学校13件で、発生校数は1,254校だった。1校で複数件の重大事態が起きている学校があることになる。
重大な被害を把握する以前の対応状況は、次のとおりである。割合はいずれも重大事態1,404件に占めるものである。
| 把握以前の状況 | 件数 | 1,404件に占める割合 |
|---|---|---|
| いじめとして認知していた | 914件 | 65.1% |
| うち解消に向けて取組中だった | 844件 | 60.1% |
| うち解消したと判断していた | 70件 | 5.0% |
| いじめとして認知していなかった | 490件 | 34.9% |
| うちいじめに該当し得るトラブル等の情報があった | 206件 | 14.7% |
| うち同情報がなかった | 284件 | 20.2% |
重大事態として把握する以前にいじめとして認知していなかったものは490件(34.9%)で、前年度も同じ490件(37.5%)だった。
認知件数が過去最多を更新した年度に、重大事態の3件に1件は事前の認知の網に入っていなかったことになる。認知件数の増加と、深刻な事案を事前に捉えられるかどうかは、同じ指標では測れない。
解消率は76.1%へ低下
年度末時点で解消していたいじめは58万5349件、解消率は76.1%だった(前年度56万7710件・77.5%)。文科省は低下の背景として、SNS上のいじめなど見えづらく解消が確認しにくい事案、1月以降に発生したため解消の定義である「3か月」を経過しない事案の増加、安易に解消としない丁寧な取り組みへの傾向を挙げている。
「解消している」と判断するには、いじめに係る行為が止んでいる状態が相当の期間(少なくとも3か月が目安)継続していること、および被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないことの2要件が必要とされる。解消率は年度末時点で測るため、1月以降に発生した事案には、年度末までにこの3か月を経過しないものが含まれる。
この記事の限界
- 認知件数は「学校がいじめとして認知した件数」であり、認知されなかった事案を含む総発生数ではない。学校・自治体の認知への取り組みの差が件数に影響し得る
- ここでの「いじめ」は、いじめ防止対策推進法の定義に基づいて学校が判断したものである。日常語の「いじめ」と範囲が一致するとは限らず、件数を語感のまま読むことはできない
- 今回の概要資料は令和2年度(2020年度)について「一旦減少した」と記すのみで、減少の要因は示していない。この資料だけから同年度の減少の背景を特定することはできない
- 態様別の構成比は複数回答で、合計は100%にならない。1件のいじめに複数の態様が計上される
- 都道府県別の差、被害・加害の重複、解消後の再発は、この記事では扱っていない
- 重大事態の件数は、学校の設置者または学校が同法第28条第1項に基づく調査を行った件数を把握したものであり、重大事態に相当し得る事案の総発生数を直接示すものではない
児童生徒1人当たり1.1台——端末は600台減り、児童生徒は13万7783人減った
文科省調査から、公立学校の学習者用コンピュータ台数と児童生徒数、普通教室の通信環境、教員のICT活用指導力と研修の受講状況を確認する。「1人1台」が何を数えた比率なのかも整理する。
REPORT通信制高校の生徒が30万人を超えた——入学者の57%は中学3年で不登校だった
通信制課程の生徒数が令和7年度に30万人を超えた。学校基本調査の推移と、文科省が2026年4月に公表した通信制高等学校実態調査(速報版)から現在地を確認する。
REPORT教員の在校等時間は平日で約30分減、それでも最多層は週50時間台——文科省勤務実態調査
文科省「教員勤務実態調査(令和4年度)」確定値から在校等時間の変化と内訳を確認し、改正給特法に基づく計画の策定状況とあわせて働き方改革の現在地を見る。